一時期、絶大な人気を誇ったレバレッジ型投資信託、通称「レバナス」。 その高いリターンへの期待から、多くの投資家を魅了してきました。
しかし、2024年から始まった新NISAの対象商品リストから、その名前は静かに姿を消しました。 「なぜ、あれほど人気だったレバナスが、国のお墨付きであるNISAから除外されたのか?」
それは、単なる制度変更ではありません。金融庁が、我々国民に対し、「この金融商品は、長期的な資産形成には適さない」と、明確なガイダンスを示したのです。
この記事では、なぜレバナスが外されたのか、その仕組み(作用機序)と、内包する構造的なリスク(副作用)を徹底的に解剖し、賢い付き合い方を提案します。
レバナスとは?「レバレッジ」の仕組み
レバナスとは、「レバレッジ型NASDAQ100投資信託」の略称です。その名の通り、米国のハイテク株を中心としたNASDAQ100指数の、日々の値動きの「2倍」になることを目指して運用される商品です。
指数が1日で5%上昇すれば、レバナスは約10%上昇します。この高いリターンへの期待が、その最大の魅力です。
金融庁がレバナスを非推奨とする、3つの構造的リスク
ではなぜ、これほど魅力的に見える商品が、新NISAの対象から外されたのでしょうか。それには、長期投資とは相容れない、3つの構造的なリスクが存在します。
① 逓減(ていげん)リスク:複利がマイナスに働く
レバレッジ型商品は、日々の値動きの2倍を目指すため、相場が上下を繰り返すだけでも、資産価値が目減りしていく「逓減リスク」という数学的な欠陥を抱えています。
例えば、基準指数が「10%下落→11.1%上昇」すると元の100円に戻りますが、2倍レバレッジ商品は「20%下落→22.2%上昇」しても97.76円にしかならず、元の価格には戻りません。長期保有すればするほど、このリスクは無視できなくなります。
② 長期投資との根本的なミスマッチ
レバレッジ商品は、本来、日々の市場の方向性を予測して取引するための、プロ向けの短期的なトレーディングツールです。長期的に資産を育てていく「バイ&ホールド」戦略には、構造的に全く向いていません。
③ 国民の「安定的な」資産形成という、NISAの趣旨との乖離
新NISAは、一部の投資家のための投機的な制度ではなく、国民全体の「安定的な資産形成」を非課税で応援するための制度です。そのため、このようなハイリスク・ハイリターン商品は、その趣旨から除外されたと考えるのが自然です。
レバレッジがもたらす、増幅された下落リスク
レバレッジの「副作用」は、下落局面で最も顕著に現れます。
もし、NASDAQ100指数が30%下落した場合、レバナスはその2倍、つまり60%近い下落に見舞われる可能性があります。 そして、元の価格に戻るためには、指数が約43%上昇すれば良いのに対し、60%下落したレバナスが元に戻るには、実に150%という、はるかに困難な上昇が必要になるのです。
この「下落からの回復が、極めて難しい」という非対称なリスク構造が、レバレッジ商品の最大の副作用です。
【結論】レバナスを「買ってはいけない人」vs「買ってもいい人」
この独特なリスクプロファイルを理解すれば、この商品が有効な人と、そうでない人の違いは、自ずと明らかになります。
タイプ①:レバナスを「買ってはいけない人」
- 対象者: 資産形成期にある、全ての現役世代(医師、会社員など)
- 目的: これから、労働収入や投資によって、資産の総額(元本)を最大化させていく必要がある。
- なぜ禁忌か: このフェーズで最も重要なのは、長期的な資産の成長(トータルリターン)です。レバナスは、その過程で、回復困難なほど元本を毀損するリスクが高すぎます。
タイプ②:レバナスを「買ってもいい人」(=適応、ただし注意が必要)
- 対象者: ポートフォリオの一部で、高いリスクを取れる、経験豊富な投資家
- 目的: 明確な相場観を持ち、短期的な値上がり益を狙う「投機(トレーディング)」を行う。
- なぜ適応となり得るか: レバレッジ商品は、短期的な市場の方向性を読むことに長けた投資家にとっては、資金効率を高めるツールとなり得ます。しかし、これはもはや「資産形成」ではなく、「投機」の領域です。
資産形成期における「標準治療」とは
では、私たちのような、本業で多忙な人間が、長期的な視点で、着実に資産を築いていく上での「標準治療(第一選択)」は何でしょうか。
それは、S&P500や全世界株式(オルカン)といった、世界の経済成長を長期的に享受できる、低コストなインデックスファンドです。
これらのファンドを、新NISAの非課税枠を最大限に活用し、淡々と積み立てていく。これが、最も合理的で、実績のある、資産形成の王道と言えます。

まとめ:制度の意図を汲み取り、合理的な判断を
新NISAからレバナスが除外されたという事実は、私たちにとって、非常に重要な「学びの機会」です。 それは、国が「長期的な資産形成のためには、避けるべき道がある」と、親切に示してくれたサインに他なりません。
ブームや熱狂に流されず、商品の本質的なリスクを理解し、自らの投資フェーズと目的に合った、最も合理的な判断を下すこと。それこそが、ナビゲーターとして私が最も伝えたいメッセージです。
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