新NISAの「成長投資枠」で、個別株への投資を考えている先生も多いでしょう。特に、株主優待は日々の生活を豊かにしてくれる、魅力的な選択肢に見えます。
しかし、やみくもに優待銘柄に投資するのは、私たちが以前の記事で議論した通り、大きなリスクを伴います。
この記事では、資産形成の王道である「コア・サテライト戦略」に基づき、ポートフォリオの「サテライト」部分として、どのように優待株と付き合い、どのような銘柄を検討する価値があるのか、その具体的な思考法を、最新の優待情報を交えながら解説します。

金融庁資料より引用
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html
【大原則】医師の投資における「コア・サテライト戦略」とは?
まず、この記事の前提となる、合理的な投資哲学を共有します。
サテライト(資産の1~2割):資産のごく一部で、自身の趣味や、応援したい企業の個別株に投資する部分。株主優待は、この「サテライト」で楽しむべき「枝葉」であり、人生を豊かにするためのスパイスです。
コア(資産の8~9割):資産の大部分は、新NISAの非課税枠を最大限に活用し、S&P500や全世界株式といった、低コストなインデックスファンドに、淡々と積立投資を行う。これが、多忙な医師にとって最も時間対効果の高い、資産形成の「幹」です。

【2025年最新】優待制度の変更から学ぶ「リスク」と「企業の姿勢」
株主優待は、永続的なものではありません。企業の経営方針転換により、ある日突然「改悪」や「廃止」が発表されるリスクを、常に内包しています。
ケース①:サイゼリヤ(7581)、モノタロウ(3064)の「優待廃止」
かつて人気の優待銘柄であったこの2社は、株主への利益還元を、優待から「配当」に集約する方針へと転換し、2024年末までに株主優優待制度を廃止しました。 これは、「優待」という形での還元よりも、全ての株主へ公平に現金を分配する「配当」を重視するという、企業の誠実な姿勢の表れとも言えます。しかし、優待を目的としていた投資家にとっては、保有し続ける理由を失う、大きな変更となりました。 これこそが、優待目的の投資が抱える、最大のリスクです。
【ケーススタディ】サテライト銘柄としての、優待株の具体的検討
では、現在も優待を継続しており、サテライトとして検討の価値がある銘柄を、私たちの評価軸で分析してみましょう。
トリドールホールディングス(3397)
丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスです。
他の金券、割引券、クーポンとの併用は可能。釣り銭はでないです。
予想1株配当 | 7.5円 | 優待の価値 | 3,000円相当 (×年2回) |
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予想配当利回り | 0.24% | 優待利回り | 1.94% |
株価 | 3,080円 | 優待の最低取得額 | 308,000円 |
100株 | 3,000円相当 100円優待券30枚 |
200株 | 4,000円相当 100円優待券40枚 |
1,000株 | 10,000円相当 100円優待券100枚 |
2,000株 | 15,000円相当 100円優待券150枚 |
200株を継続保有1年以上で3000円相当が追加
「丸亀製麺」という、日常的に利用価値の高い優待である点。そして、「長期保有」を明確に優遇する制度設計は、企業と株主の長期的な関係性を重視する姿勢の表れと評価できます。
ビックカメラ(3048)
家電量販店のビックカメラは商品券がもらえます。電化製品以外に食べ物などにも使えます
インターネット通販、通販サイトでも利用可能です。くわしくはビックカメラの株主優待ページを参考いただければ幸いです。
待制度 | 基準日 | 所有株式数 | |||
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100株 以上 500株 未満 | 500株 以上 1,000株 未満 | 1,000株 以上 10,000株 未満 | 10,000株 以上 | ||
所有株式数 に応じた株主優待制度 | 2月末日 | 2,000円 (2枚) | 3,000円 (3枚) | 5,000円 (5枚) | 25,000円 (25枚) |
8月末日 | 1,000円 (1枚) | 2,000円 (2枚) | 5,000円 (5枚) | 25,000円 (25枚) | |
保有期間 に応じた株主優待制度 | 8月末日 | 1年以上2年未満継続保有(100株以上) ※半期ベースの株主名簿に連続3・4回記録 | 1,000円 (1枚) | ||
2年以上継続保有(100株以上) ※半期ベースの株主名簿に連続5回記録 | 2,000円 (2枚) |
1年の継続保有で1000円、2年以上継続保有で2000円の優待がもらえます。100株以上から対象なのが嬉しいですね。
3年以上の長期保有優待も魅力
他にも3年保有で長期保有という銘柄も多いですから狙い目ですね。例えば、学研は
株式継続保有期間3年以上で400株1000円相当、1200株2000円相当の図書カードが貰える長期保有優待があります。

ヒューリックの株主優待はカタログギフトが3000円→6000円にアップするので人気があります。
結論:優待投資と、どう向き合うべきか
株主優待は、私たちの生活を豊かにしてくれる、魅力的な制度です。 しかし、それは企業の「おまけ」であり、いつ廃止されてもおかしくない、不確実なものであることを、常に心に留めておく必要があります。
だからこそ、資産形成の「コア」は、全世界やS&P500といった、普遍的で、盤石なインデックスに託す。 そして、人生を彩る「サテライト」として、廃止リスクも理解した上で、それでも応援したい、と思える企業の株を、優待と共に楽しむ。
この「コア・サテライト戦略」こそが、優待投資という、少しリスキーで、しかし楽しいゲームとの、最も合理的で、賢明な付き合い方なのです。