【医師の結婚と資産】離婚で後悔しないための、法務・財務戦略の完全ガイド

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「ATM医」という言葉に、胸がざわついた経験はありませんか?

高い専門性と引き換えに得た収入が、いつしか家庭内での役割を規定してしまい、パートナーとの間に見えない溝が生まれていく…。これは、決して他人事ではありません。

この記事は、離婚を推奨するものでは、もちろんありません。むしろ逆です。 結婚という、人生で最も重要なパートナーシップを、より強固で、揺るぎないものにするために、我々医師が知っておくべき「お金と法律のルール」を、冷静に、そして論理的に解説します。

これは、お互いを尊重し合うための「知的な武装」なのです。

目次

【基本原則】知っておくべき2つの法的・経済的ルール

まず、結婚という「契約」に伴う、2つの基本的なルールを理解することが、すべての戦略の出発点となります。

ルール①:別居から離婚成立までの生活費「婚姻費用」

婚姻費用(実務上「コンピ」と呼ばれます)とは、夫婦が同等のレベルの生活を維持するために必要な費用です。重要なのは、別居を開始してから離婚が成立するまでの期間、収入の多い側が少ない側へ、支払い続けなければならない点です。

裁判所の算定表に基づくと、年収の3〜4割が目安となり、例えば年収2,000万円の医師であれば、離婚協議が長引くほど、高額な費用を支払い続ける可能性があります。

ルール②:婚姻中の資産を公平に分ける「財産分与」

財産分与とは、「婚姻期間中に、夫婦が協力して築いた共有財産」を、離婚時に原則として2分の1ずつに分ける制度です(民法768条)。

重要なのは「協力して」という点で、たとえ資産形成が医師である夫(または妻)の収入のみによるものであっても、パートナーの家事や育児といった貢献が認められ、共有財産とみなされます。

  • 対象となる資産: 婚姻期間中に得た預貯金、株式、投資信託、不動産、保険など。
  • 対象とならない資産: 独身時代に築いた資産(特有財産)、親からの相続財産。

つまり、結婚後にコツコツと積み上げた資産は、離婚時にはその半分が分与の対象となる、というのが基本ルールです。

【予防戦略】結婚前にできる、パートナーシップを守るための準備

これらのルールを踏まえ、将来のリスクを最小限に抑えるには、結婚前の対策が最も効果的です。

処方箋①:最強の盾「婚前資産」を明確に築き、記録する独身時代に形成した「特有財産」は、財産分与の対象外です。キャリアの早い段階から資産形成に励み、その資産が「いつ、どのように形成されたか」を、証券口座の取引記録などで明確に記録しておくことが、最も強力な防衛策となります。

処方箋②:法的に有効な「夫婦財産契約(婚前契約)」を結ぶ欧米では一般的な「婚前契約」も、有効な手段です。「どの財産を誰の所有とするか」「共有財産をどう管理するか」などを結婚前に書面で契約しておくことで、将来の争いを未然に防ぎます。ただし、あまりに一方的に不利な内容は無効となる可能性があるため、弁護士など専門家を交えて作成するのが賢明です。

処方箋③:一つの選択肢としての「事実婚」法律上の婚姻関係を結ばない「事実婚」であれば、関係を解消しても財産分与の義務は原則として生じません。婚姻費用のリスクも回避できます。ただし、パートナーの理解を得るための誠実な対話や、相続権がないなどのデメリットも存在するため、慎重な判断が求められます。

【リスク管理】結婚後にできる、資産を守るための選択肢

すでに結婚している場合でも、打てる手は残されています。

処方箋④:法人設立による資産管理の可能性と注意点医療法人などを設立し、資産を法人名義にすることで、個人の財産と切り離す方法があります。法人名義の資産は、原則として財産分与の対象外です。ただし、実態が個人の資産管理会社に過ぎないと判断された場合などは、分与の対象となる可能性もあります。安易な判断はせず、必ず税理士や弁護士に相談してください。

処方箋⑤:「財産隠し」という、推奨されない危険な“治療”別口座に資産を移す「財産隠し」を考える方もいるかもしれません。しかし、弁護士会照会制度(23条照会)などにより、相手方の弁護士が金融機関に口座情報の開示を求めることが可能です。発覚した場合、裁判官の心証を著しく悪化させ、かえって不利な結果を招くリスクが極めて高いため、選択してはならない禁じ手です。

まとめ:最悪の事態を避けるために、医師が今すぐやるべきこと

高収入医師の離婚には、深刻な経済的リスクが伴います。しかし、それは恐れるべきものではなく、知的に理解し、備えるべきものです。

  • 婚前の医師は: まずは「婚前資産」の形成に注力し、「婚前契約」も、パートナーとの対話のテーマとして視野に入れる。
  • 婚後の医師は: 「財産分与」のルールを正しく理解し、現状の資産状況を把握した上で、必要であれば法人化などの対策を専門家と検討する。

最も重要なのは、お互いを尊重し、良好なパートナーシップを築くことです。そして、その土台の一つとして、お金と法律に関するオープンな対話と、万が一への備えがあります。クリアなルールは、不要な疑念をなくし、むしろ二人の信頼関係を強固にすると、私は考えています。

この記事が、先生方の漠然とした不安を解消し、具体的な一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

免責事項: 本記事は法律に関する情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。個別の事案については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

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