長い夜、鳴り止まないPHS、仮眠室の硬いベッド、そして翌日に続く通常業務……。医師にとって「当直」は、心身ともに最も過酷な業務の一つです。
この過酷な時間を、根性や体力だけで乗り切ろうとしていませんか?
かつての私もそうでした。しかし、数々の当直を経験する中で、「優れたツール(グッズ)への投資が、当直のパフォーマンスとQOLを劇的に改善する」という結論に至りました。
この記事は、単なる「おすすめグッズの羅列」ではありません。 医師である私が、自身の経験と論理的思考に基づき、「睡眠の質」「心身の回復」「業務効率」という3つの軸で、当直を乗り切るためのアイテムを厳選した、戦略的なリストです。
これらは単なる「モノ」ではなく、先生ご自身のパフォーマンス、ひいては患者さんの安全を守るための「投資」です。ぜひ、ご自身の状況に合ったアイテムを見つけてください。
この記事は、年間を通して使える当直グッズの決定版です。もし先生が、特に「夏の暑さ」対策に関心がおありでしたら、まずはこちらの季節特化記事からお読みいただくのもおすすめです。
1. 投資すべきは3つの軸:当直の質を決める戦略的思考
やみくもにグッズを揃えても、荷物が増えるだけです。まず、当直における課題を3つの要素に分解し、それぞれに対して最適な投資を行うという視点を持ちましょう。
- 睡眠の質 (Quality of Sleep): たとえ15分でも、深い眠りを得ることができれば、その後の判断力は大きく変わります。光や音を遮断し、いかに早くリラックス状態に入れるかが鍵です。
- 心身の回復 (Mental & Physical Recovery): 空腹や疲労は、思考力と集中力を確実に奪います。短時間で栄養を補給し、効率的に気分をリフレッシュさせる手段を確保しておくことが重要です。
- 業務効率 (Work Efficiency): デスク周りの環境を最適化し、カルテ記入や情報検索の時間を短縮する。そうして生まれた「数分」が、貴重な休息時間になります。
この3つの軸に基づき、具体的なアイテムを見ていきましょう。
2. 【睡眠の質UP編】15分の仮眠を1時間の休息に変えるグッズ
1. ノイズキャンセリングイヤホン

当直室で最も睡眠を妨げるのは「予期せぬ物音」。PHSの着信音は聞き逃さず、廊下の足音やナースステーションのざわめきといった「不要な環境音」だけを遮断できるノイズキャンセリングイヤホンは、もはや必須装備と言えます。外部音取り込みモードの調整がうまい製品を選ぶのがコツです。
▶ 私が愛用する「Apple AirPods Pro 2」をAmazonで見る
2. 光を完全に遮断する立体型アイマスク

仮眠室が完全な暗室であることは稀です。窓から漏れる光や、同室の医師が点ける電気など、光の刺激は睡眠の質を著しく低下させます。自身の眼球にフィットし、圧迫感がなく、光を100%遮断できるものを選びましょう。
▶ 3D立体構造で圧迫感のない人気アイマスクをAmazonで見る
3. 自分専用の携帯用枕(マイ枕)

病院の枕が自分に合うことは、まずありません。首や肩の痛みを引き起こし、休息どころか疲労を蓄積させる原因に。ウレタン製など、自宅の寝心地を再現できる携帯用枕を持参するだけで、仮眠の質は劇的に向上します。
4. 肌触りの良いリカバリーウェア

ゴワゴワしたスクラブのまま眠るのと、リラックスできるウェアに着替えるのとでは、心身のスイッチの入り方が全く違います。吸湿性と速乾性に優れた、肌触りの良いものを選びましょう。血行促進などを謳うリカバリーウェアは、QOLへの投資として最適です。
▶ 着るだけで体をケアする「BAKUNE」のリカバリーウェアをAmazonで見る
5.高性能な耳栓

イヤホンが苦手な医師向け。自分の耳の形にフィットし、異物感が少なく、かつ高い遮音性を持つ製品を選ぶのが鍵。
Adceyの耳栓はコスパに優れ防音・遮音値38dBと驚くほど効果があります。
6.携帯用のブランケット(薄手のフリースやダウン素材)
院内の空調は調整できず、特に夏場は冷えすぎることも。体温調節はコンディション維持の基本です。軽くて暖かいフリースやダウン素材がベスト。

7.アロマミスト or ピローミスト
ベンダーなど鎮静効果のある香りは、交感神経の高ぶりを抑え、入眠をスムーズにします。嗅覚からアプローチする、穏やかな睡眠導入法です。

▼より深く知りたい方へ:睡眠の質を極める専門ガイド
ここでは睡眠に関する主要なアイテムを紹介しましたが、枕のより詳細な比較や、仮眠の質をサイエンスに基づいて最大化するための具体的なテクニックについては、以下の専門記事で徹底解説しています。
3. 【心身の回復編】疲弊した心と体をリカバリーするグッズ
8.完全栄養食・プロテインバー

当直中の食事は、コンビニ弁当やカップ麺になりがちですが、高脂質・高炭水化物の食事は眠気を誘い、パフォーマンスを低下させます。短時間でバランス良く栄養を摂取できる完全栄養食や、腹持ちの良いプロテインバーは、賢明な選択です。
9. こだわりのドリップバッグコーヒー
院内の自販機の甘いコーヒーではなく、自分が「美味しい」と感じる一杯を飲む時間は、最高の気分転換になります。お気に入りのドリップバッグコーヒーを数種類持参するだけで、精神的な満足度が大きく変わります。
▶ ちょっと贅沢な気分になれる「澤井珈琲」のセットをAmazonで見る
【心身の回復編】(合計9アイテム)
削られたHPとMPを、いかに効率的に回復させるか
- プロテインバー / 完全栄養食(★採用決定済み)
- 選定理由の骨子:血糖値の乱高下を招く高炭水化物食を避け、持続的なエネルギーと集中力を維持する。最も合理的な栄養補給。
- フリーズドライの味噌汁・スープ(★採用決定済み)
- 選定理由の骨子:身体が冷える深夜帯に、温かい汁物で体内から温める。精神的な安堵感(ホッとする感覚)もパフォーマンスに影響する。
- こだわりのドリップバッグコーヒー
- 選定理由の骨子:味気ない自販機のコーヒーではなく、「美味しい」と感じる一杯を飲む行為そのものが、最高の精神的回復(メンタルリフレッシュ)になる。
- カフェインレスのハーブティー
- 選定理由の骨子:これ以上カフェインを摂取したくないが、何か温かいもので一息つきたい時に。カモミールなどがおすすめ。
- ナッツ、ドライフルーツ、ハイカカオチョコレート
- 選定理由の骨子:良質な脂質やミネラル、ポリフェノールを手軽に摂取。罪悪感が少なく、満足感も高い「賢い間食」。
- リフレッシュシート(顔・体用)
- 選定理由の骨子:シャワーを浴びる時間がない時でも、顔や首筋を拭くだけで擬似的に爽快感を得られる。眠気覚ましにも効果絶大。
- 携帯マッサージガン or マッサージボール
- 選定理由の骨子:長時間のPC作業や緊張する処置で凝り固まった僧帽筋や肩甲骨周りを物理的にほぐす。血流を改善し、体をリセットする。
- ビタミン剤・サプリメント
- 選定理由の骨子:不規則な生活で不足しがちなビタミンB群やC、マグネシウムなどを補い、体調のベースラインを維持する。
- マヌカハニーやのど飴
- 選定理由の骨子:乾燥した院内で喉を酷使した後に。喉のイガイガは集中力の妨げ。抗菌作用も期待できるマヌカハニーは特に有用。
4. 【業務効率化編】時間と余裕を生み出すデスク周りグッズ
(No.) PD対応 急速充電器&長めのケーブル
(ここに商品の画像を挿入) 医師の視点: スマホ、イヤホン、PC…当直中に充電が必要なデバイスは多数。コンセントが遠い場合も想定し、Power Delivery対応の小型急速充電器と、2m程度の長めの充電ケーブルは必須です。充電待ちの時間は無駄でしかありません。
▶ 定番!AnkerのPD対応小型急速充電器をAmazonで見る
(No.) 複数ポート付きUSB-Cハブ
医師の視点: 医局のデスクで使えるコンセントやポートは限られています。これ一つでPCの充電、スマホの充電、外部モニターへの出力などを一括管理できるハブは、まさに「モバイル医局」です。
▶【関連記事】AnkerのUSB-Cハブは、なぜ多忙な医師の”必須装備”なのか?
3. 【業務効率化編】(合計7アイテム)
貴重な時間を1秒でも多く生み出し、休息や思考の時間に充てる
- PD対応マルチポート急速充電器
- 選定理由の骨子:PC、スマホ、イヤホン等を一つのコンセントから同時に急速充電。充電待ちの時間をなくし、デスク周りをシンプルにする。
- 長尺(2m以上)で高耐久なUSB-Cケーブル
- 選定理由の骨子:医局のデスクはコンセントが遠いことが多い。ケーブルの長さは、行動範囲の広さに直結する。断線しにくい高耐久モデルを選ぶ。
- 多機能USB-Cハブ
- 選定理由の骨子:HDMI、SDカード、有線LANなど、あらゆる接続に対応する「モバイル医局」。これ一つで「繋げない」というストレスが消える。
- 書き心地の良い多色ボールペン
- 選定理由の骨子:思考を止めずに情報を色分けしてメモを取るための必須ツール。ストレスなく書けることは、思考のスピードを落とさないために重要。
- 小型LEDライト(クリップ式など)
- 選定理由の骨子:消灯後の病棟での回診や、暗い当直室で書類を確認する際に。スマホのライトより広範囲を照らせ、両手が使えるクリップ式が便利。
- タブレット端末(iPad, Fire HDなど)
- 選定理由の骨子:主要な医学書や論文のPDFを全て入れておけば、重い書籍を持ち運ぶ必要がなくなる。情報へのアクセス性を最大化する。
- 折りたたみ式PCスタンド
- 選定理由の骨子:長時間のカルテ入力時の姿勢を改善し、首・肩への負担を軽減する。身体的な消耗を防ぐことも、長期的なパフォーマンス維持に不可欠。
5. 【衛生・その他編】最低限の身だしなみを保つための必須グッズ
(携帯用歯ブラシ、ドライシャンプー、消臭スプレー、コンタクト予備、ハンドクリームなど数点を追加し、合計30選となるように調整)
4. 【衛生・その他編】(合計6アイテム)
プロフェッショナルとしての最低限の身だしなみを保つ
- 携帯用歯ブラシ・歯磨き粉セット
- 選定理由の骨子:仮眠後のリフレッシュと、他のスタッフや患者と話す際のエチケットとして、もはや説明不要の必須アイテム。
- マウスウォッシュ or ブレススプレー
- 選定理由の骨子:歯を磨く時間すらない、緊急コール時の即時対応として。一瞬で口内をリセットできる。
- ドライシャンプー
- 選定理由の骨子:汗でベタつく頭髪の不快感をリセットする最終兵器。髪がサッパリするだけで、精神的なリフレッシュ効果は計り知れない。
- 制汗・消臭スプレー(無香料タイプ)
- 選定理由の骨子:走り回って汗をかいた後や、匂いの強い食事の後に。医療現場では、香りで周囲に影響を与えない無香料が鉄則。
- 高保湿ハンドクリーム
- 選定理由の骨子:頻回なアルコール消毒による深刻な手荒れを防ぐ。皮膚のバリア機能を保つことは、感染対策の観点からも重要。
6. 医師のパッキング術:忘れ物を防ぎ、準備を効率化するコツ
これらのグッズを効率的に管理するため、「バッグインバッグ」の活用を強く推奨します。 「①睡眠用」「②デスク用」「③衛生用」と、用途別に小さなポーチにまとめておき、当直の際はそのポーチをカバンに入れるだけ。これで忘れ物が劇的に減り、準備の負担も最小限になります。
▶ 用途別に整理しやすい無印良品の「吊して使える洗面用具ケース」が最適解
まとめ:最高の当直は、優れた準備から生まれる
今回ご紹介したグッズは、決して贅沢品ではありません。 これらは、過酷な環境下で心身の健康を保ち、医療の質を維持し、そして翌日も社会人として活動するための「自己防衛であり、未来への投資」です。
この記事が、先生方の当直のQOLを少しでも向上させる一助となれば、ナビゲーターとしてこれほど嬉しいことはありません。
【ぜひご意見をお聞かせください】 先生方が実際に使ってみて「これは欠かせない!」という当直グッズがあれば、ぜひコメントで教えていただければ幸いです。