SNSで話題の急騰株。その魅力的なチャートに、心が動いた経験はありませんか?
しかし、その背後には、我々のような多忙な専門職を“カモ”にする、巧妙な罠が仕掛けられているかもしれません。それが「仕手株」です。
これは、株式市場に潜む、一種の「病」とも言える存在です。この記事では、この市場の病の正体を、医師の視点から解剖し、先生方が自らの貴重な資産を、こうした投機的リスクから守るための、具体的な見分け方と、投資の基本原則を解説します。
仕手株の巧妙な手口:その発生から終焉までの3フェーズ
仕手株が生まれてから、その命脈が尽きるまでには、特徴的なプロセスがあります。
フェーズ①:玉集め(潜伏期間)「仕手筋」と呼ばれる、巨大な資金力を持つ投機家グループが、他の投資家に気づかれないよう、静かにターゲットとなる株を買い集める段階です。株価はほとんど動かず、水面下で静かに準備が進みます。
フェーズ②:玉転がし(株価吊り上げ)仕手筋は、一気に買い注文を入れて株価を吊り上げ、出来高を急増させます。同時に、SNSなどで「この銘柄は、すごい材料がある」といった、真偽不明の情報を流布し、個人投資家の注目を集めます。急騰を見た多くのイナゴ投資家が群がり、株価は加熱していきます。
フェーズ③:ふるい落とし(暴落)株価が十分に吊り上がったところで、仕手筋は、保有していた全ての株式を、群がってきた個人投資家に向けて一気に売り浴びせます。巨大な売り圧力で株価は暴落し、高値で掴んだ個人投資家だけが、その残骸と共に取り残されるのです。
【見分け方】仕手化しやすい銘柄の、3つの危険な兆候
どのような銘柄が、この「仕手」のターゲットになりやすいのでしょうか。見分けるための、特徴的な兆候が3つあります。
兆候①:ファンダメンタルズと無関係な、不自然な株価の急騰明確な好材料(好決算、新技術の発表など)がないにも関わらず、株価だけが連日急騰している。これは、最も重要な危険信号です。
兆候②:特定のSNSなどでの、過剰で感情的な買い煽り「テンバガー確定!」「今買わないと乗り遅れる!」といった、論理的根拠の薄い、感情的な買い煽りが特定の銘柄に集中している場合は、極めて注意が必要です。
兆候③:時価総額が小さく、流動性が低い少ない資金で株価をコントロールしやすいため、発行株式数が少なく、普段の出来高が小さい、いわゆる「小型株」がターゲットになりやすい傾向があります。
【実例チャート】過去の仕手株的な値動き
ここでは、過去に仕手株とされた銘柄をいくつか紹介します。以下の銘柄は、仕手株としての動きが見られた例です。チャート画像を参照して、仕手株の特徴を理解しましょう。
仕手株は過去に何度も発生しています。紹介するものの中には仕手株っぽいものを集めました。
グローバルウェイ(3936)
グローバルウェイはイナゴ煽りや分割で見事な仕手化でしたね。典型的なチャート形成となっています。

ダブル・スコープ(6619)
2022年頃話題になり急騰しましたが、今見るとそこまでな感じもしますね。

リミックスポイント
リミックスポイントも俯瞰してみるとピークが多く、仕手株的な動きが散見されます。

ポラリス・ホールディングス
ポラリスも典型的な仕手株チャートですね。低位なのでよく狙われているかもしれません

ナガホリ(8139)

ナガホリはなかなか手が出にくいチャートになっております。さらに仕掛けが入るかもしれないです。注目かもしれません。
アースインフィニティ(7692)
最近スト安で話題に銘柄です。出来高が伴っていないのに釣り上げが行われており、仕手株ではないかといわれています。

【対策】仕手株から資産を守るための、治療と予防
治療法:もし遭遇してしまった場合の、唯一の選択肢
もし、保有している銘柄に、これらの兆候が見られた場合の治療法は、ただ一つです。 それは、ためらわずに「損切り」をすることです。
予防法:最強の資産防衛は、健全なポートフォリオ
そのための最高の予防法は、インデックス投資を主体とした、健全なポートフォリオを、日頃から築いておくことです。 資産の大部分を、S&P500や全世界株式といった、盤石な市場全体に投資していれば、こうした個別株のリスクに、一喜一憂する必要はなくなります。

まとめ:医師の投資は「ギャンブル」ではなく「資産形成」
我々医師の投資の目的は、一攫千金を狙う「ギャンブル」ではありません。 それは、自らの労働で得た貴重な資産を、論理とエビデンスに基づき、時間をかけて着実に育てていく、「資産形成」というプロジェクトです。
仕手株のような市場の罠を正しく理解し、それを冷静に回避すること。それこそが、多忙な我々が実践すべき、最も合理的で、賢明な資産防衛術なのです。
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