
当直中の食事。それは、単に空腹を満たすための行為ではありません。
それは、深夜の緊急コールや、翌朝のカンファレンスを乗り切るための、知的・身体的パフォーマンスを左右する、最も重要な「エネルギー補給戦略」です。間違った選択は、急激な眠気や集中力の低下に直結し、医療安全を脅かすリスクにすらなり得ます。
この記事では、医師の視点から、当直という特殊な24時間サイクルの中で、何を、いつ、どのように食べるべきか。その食事戦略の全てを、網羅的に解説します。
【基本戦略】当直のパフォーマンスを決める、3つの食事原則
最適な食事を選択するために、まず全ての判断の基礎となる3つの原則を共有します。
原則①:血糖値の安定化が最優先眠気を誘発する血糖値の乱高下を避けるため、高GI食品(菓子パン、白米、甘いジュース)の単独摂取は避ける。タンパク質や食物繊維と組み合わせ、血糖値の急上昇を抑えることが、持続的な集中力を生み出します。
原則②:消化への負担を最小限に仮眠の質を下げないよう、揚げ物や脂質の多い食事は、特に深夜帯は避けるべきです。消化にエネルギーを使い、胃もたれを起こせば、休息の質は著しく低下します。
原則③:「精神的満足度」も重要な栄養素常にストイックな食事では、精神が消耗します。「このコール対応が終わったら、あのご褒美メシを」といった、計画的な楽しみ
🍱夜勤・当直中によくある食事スタイル
医者の場合、だいたい以下の選択肢になるかと思います。
- 持参お弁当
- 病院の食堂で済ませる
- 研究会などで提供されるお弁当
- 検食の食事
- コンビニなどで購入
- フードデリバリーで変化を加える
いくつかをローテーションするのがマンネリ回避のカギです。
🌀「同じコンビニ」による食事のマンネリ問題
夜勤先が同じ病院だと、自然と「いつも同じコンビニご飯」に。
ご飯・パスタ・冷凍麺……数週間もすれば飽きが来ますよね。
【時間術】24時間サイクルを乗り切る、食事タイミング戦略
24時間という特殊なサイクルの中では、「1日3食」という概念を捨て、「分食」でエネルギーを管理するのが合理的です。
朝方(06:00頃):再起動朝の業務に備え、即効性のあるエネルギー源を少量補給。(例:バナナ、エナジードリンク)
当直入り前(18:00頃):準備消化の良い炭水化物+タンパク質で、持続的なエネルギーを確保。(例:力うどん、親子丼など)
深夜(23:00-02:00):維持眠気を誘わない、低糖質・高タンパクな間食で、集中力を維持。(詳細は次章で解説)
仮眠前(02:00以降):鎮静身体を温め、消化に負担のない液体・半固形物で、睡眠の質を高める。(例:フリーズドライの味噌汁、スープ、ギリシャヨーグルト)
【応用編】ストレスと眠気をコントロールする、戦略的補食術
深夜の緊急コールなど、強烈なストレスは、私たちの身体にコルチゾールを分泌させ、血糖値を急上昇させる甘いものや、高脂質なジャンクフードへの渇望を引き起こします。しかし、その欲求に従うのは、パフォーマンス低下の悪循環を招く、最悪の選択です。
避けるべきNG補食
加糖の缶コーヒー、ジュース類: 血糖値を最も急激に上昇させる。
菓子パン、ドーナツ: 血糖値スパイクの主犯。
ポテトチップスなどのスナック菓子: 消化にエネルギーを使い、身体をさらに疲れさせる。
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✅ 検食・支給弁当は正当に利用すべし
病院によっては、医師に対して「検食」が義務的に割り当てられることもあります。
これは業務なので、きちんといただきましょう。足りない場合はデリバリーサービスなども活用!
また、研究会などで支給される弁当も積極的に活用しましょう。
予備の栄養補給に備えて、小さな冷凍おにぎりやプロテインバーをバッグに入れておくのもおすすめです。

📝 まとめ:食事は、自分自身への、最も重要な医療行為
我々医師にとって、当直中の食事は、単なる空腹を満たすための行為ではありません。 それは、自らの心身の状態を最適に保ち、医療安全を守り、最高のパフォーマンスを引き出すための、自分自身に対する、最も基本的で、最も重要な「医療行為」なのです。