新NISAで、オルカンやS&P500へのインデックス投資を始めた先生方。 その次のステップとして、「もう少し積極的にリターンを狙いたい」と考え、NASDAQ100という指数に興味を持った方も多いのではないでしょうか。
しかし、このNASDAQ100、S&P500とは、似て非なる、非常に「尖った」個性を持つ指数です。
この記事では、このNASDAQ100という“専門薬”の特性を、S&P500という“標準治療薬”と比較しながら、その作用機序(構成銘柄)と副作用(リスク)を分析し、我々医師の資産ポートフォリオに、どう「処方」すべきかを、論理的に解説します。
NASDAQ100とS&P500、その決定的な違い
この2つの指数を理解する鍵は、その「対象範囲」と「集中度」の違いにあります。
① 対象範囲の違い:「総合内科」vs「専門外来」
S&P500: 米国の主要な産業を代表する、優良企業約500社で構成されます。金融、ヘルスケア、エネルギー、一般消費財など、米国経済全体を幅広くカバーする、いわば「総合内科」です。
NASDAQ100: NASDAQ市場に上場する、金融セクターを除いた、時価総額上位100社で構成されます。結果として、情報技術セクターの比重が非常に高い、「IT・ハイテク専門外来」と言えるでしょう。
② 集中度の違い:トップ10銘柄への、極端な集中
これが、最も重要な違いです。
- S&P500: 上位10社の構成比率は、全体の約30%。
- NASDAQ100: 上位10社の構成比率は、全体の50%以上を占めます。
つまり、NASDAQ100は、S&P500以上に、ごく一握りの巨大ハイテク企業(GAFAM、NVIDIAなど)の業績に、そのパフォーマンスが大きく左右される、極めて集中度の高いポートフォリオなのです。
QQQ:NASDAQ100指数連動ETF
NASDAQ100の構成銘柄は簡単に知ることができます
NASDAQ100指数連動のETF(上場投資信託)QQQがあります。
QQQは、NASDAQ100の構成銘柄をそのままに、その時価総額に基づいて投資することで、NASDAQ100の動きを反映します。
ETFのQQQのページから現在の構成銘柄を知ることができますQQQの公式ページ
NASDAQ100の主要な構成銘柄
NASDAQ100の構成銘柄には、Apple・Microsoft・Amazon・Tesla・Alphabetなどのテック企業をはじめ、高い成長分野や技術革新に取り組む企業が多く採用されています。
有名企業が多いので、聞いたことのある企業が多いと思います。
NASDAQ100の構成銘柄の中でも、特に割当比率が大きい10社を見てみましょう。これらは、その影響力と市場キャップの大きさから、NASDAQ100の動きを大きく左右する企業群となっています。
- Microsoft Corp: 12.75%
- Apple Inc: 12.03%
- NVIDIA Corp: 7.27%
- Amazon.com Inc: 6.89%
- Tesla Inc: 4.45%
- Meta Platforms Inc Class A: 4.42%
- Alphabet Inc Class A: 3.79%
- Alphabet Inc Class C: 3.68%
- Broadcom Inc: 2.40%
- PepsiCo Inc: 1.68%
これらの企業は、AI、拡張現実(AR)、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モバイル決済、ストリーミングサービス、電気自動車など、現代の技術革新の最前線に立っています。

NASDAQ100構成銘柄
NASDAQ100の銘柄には、飲料大手のPepsiCoや大手小売業のCostcoなどの企業も含まれています。また、割当比率が1%以下の銘柄が大多数を占めています。(Other)

ポートフォリオにおける、NASDAQ100の最適な位置づけ
では、この「尖った専門薬」を、我々はどう処方すべきでしょうか。 その答えは、**「コア・サテライト戦略」**にあります。
- 【コア(中核)】資産の8~9割資産の大部分は、S&P500や全世界株式(オルカン)といった、より広く分散されたインデックスファンドに置き、市場全体の平均点を、低コストで、着実に狙います。これが、我々の資産形成の、揺るぎない「幹」となります。
- 【サテライト(衛星)】資産の1~2割資産のごく一部で、NASDAQ100のような、より高い成長性が期待できるが、リスクも高い指数に投資し、プラスアルファのリターンを狙います。コアが安定しているからこそ、サテライトで、少しだけ積極的に「攻める」ことができるのです。
この戦略的使い分けこそが、リスクを管理しつつ、リターンを最大化するための、最も合理的なアプローチです。、NASDAQ100は常にNASDAQ上場企業の中で最も時価総額が大きい100社を反映するように保たれています。

まとめ:「標準治療」と「専門薬」を、賢く使い分ける
NASDAQ100は、未来のテクノロジーの成長を信じる投資家にとって、非常に魅力的な指数です。 しかし、その高い集中度は、S&P500以上の価格変動リスク(副作用)も伴います。
まずは、S&P500やオルカンという「標準治療」で、資産形成の土台を固める。 そして、余裕資金の範囲内で、NASDAQ100という「専門薬」を、サテライトとして、少量だけ「追加処方」する。
それが、この強力なツールとの、最も賢明な付き合い方と言えるでしょう。