台風、地震、そして、それに伴う大規模な停電…。
災害が発生した時、我々医師は、一人の被災者として家族を守る責任と、医療従事者として地域社会に応えるべき、二重の責務を負うことになります。
パニック状態の中で、冷静な判断を下し、プロフェッショナルとして機能するためには、「運」や「偶然」に頼るのではなく、平時からの、論理的で、戦略的な「備え」が不可欠です。
この記事では、医師の視点から、本当に必要な防災装備と、その準備における思考のフレームワークを解説します。
【第一目標】「情報・通信」を確保する装備
災害時の全ての行動は、正確な情報に基づいて行われます。電力と通信の確保は、何よりも優先されるべき、まさに生命線です。
装備①:大容量ポータブル電源
スマホの充電はもちろん、PCでの情報収集、そして在宅医療機器などの電源を確保できることは、家族の安心と、プロとしての機能維持の両方に貢献します。ソーラー充電対応モデルなら、長期的な停電にも備えられます。これは、防災装備における、最も重要な投資の一つです。
Anker Portable Power Station
装備②:手回し・ソーラー充電対応ラジオ
携帯電話の基地局がダウンした場合、最も信頼できる情報源は、広域に情報を届けるラジオです。電力網に依存しない、手回しやソーラーでの充電機能は、究極のリスクヘッジとなります。
装備③:複数キャリアの通信手段
【医師の視点】 メインで使っているキャリア(例:ドコモ)の通信網が、災害でダウンする可能性は常にあります。その際、別キャリアのSIMを入れたモバイルルーターや、サブのスマートフォンを用意しておく「通信の冗長化」は、病院からの緊急招集に応じ、地域医療に貢献するための、プロとしての必須の備えです。
【第二目標】「最低限のQOL」を維持する装備
心身の消耗は、冷静な判断力を奪います。劣悪な避難環境下でも、最低限の快適性と衛生を保つことが、長期戦を乗り切るための鍵です。
装備④:非常用トイレ
衛生環境の悪化は、感染症の温床となります。特に、排泄の問題は、人間の尊厳に関わる、最も基本的なQOLの問題です。断水時に、これが自宅にあるという安心感は、計り知れません。
装備⑤:ヘッドランプ
懐中電灯と違い、両手が自由になるヘッドランプは、夜間の避難や、停電下での作業において、圧倒的に有利です。万が一、暗闇で応急処置などを行う必要が生じた場合、その差は決定的となります。
【第三目標】「医療専門職」としての、最低限の備え
我々は、時に、被災した隣人や地域住民に対し、応急処置を施す立場にもなります。そのための、最低限の準備です。
装備⑥:プロ仕様のパーソナル救急セット
市販の救急セットに加え、自分自身の専門性を考慮した、最低限の医薬品や処置具(ドレッシング材、テープ、手袋、消毒薬など)を、一つのポーチにまとめておく。これは、あくまで非常時の自衛・応急用の備えです。
装備⑦:重要情報の「紙媒体」でのバックアップ
電子カルテやオンラインのガイドラインが、一切参照できなくなる最悪の事態に備えます。所属する医療機関の災害マニュアル、緊急連絡網、そして、自身が参照する可能性のある、最低限の治療プロトコルなどを印刷し、防水の袋に入れて保管しておきましょう。
まとめ:準備こそが、最大の危機管理
災害は、いつ、どこで起こるか予測できません。 しかし、それに「備える」ことは、今すぐ、誰にでもできます。
特に、社会的な責務を負う我々医師にとって、防災とは、単なる個人の備えではありません。それは、自らの家族を守り、プロフェッショナルとしての機能を維持し、ひいては地域社会に貢献するための、論理的で、計画的なリスクマネジメントなのです。