Windows 11へのアップグレード。 それは、PCのOSを、より新しく、より安全なものへと移行させる、いわば計画的な「治療」です。
しかし、先日、私のPCで、予期せぬ「合併症」が発生しました。 「互換性のないアプリ」として、すでにアンインストールしたはずの「カスペルスキー」が検出され、アップグレードがブロックされてしまったのです。
公式の削除ツールを使っても、症状は改善しない。この記事では、この難治性のエラーを、たった3つのコマンドで根本的に解決する、具体的な治療プロトコルを解説します。

なぜ、消したはずのアプリが“見える”のか?
Windows 11へのアップグレード中、「次の作業が必要です」という画面で、「カスペルスキー」が互換性のないアプリとして表示され、先に進めない。
過去にカスペルスキーをインストールしていたが、すでに公式のアンインストーラー、および完全削除ツール(kavremover)で削除済みである。
カスペルスキーアプリケーションの完全削除ツール(kavremover)
問題の根源は、カスペルスキーの残存ファイルそのものではなく、「Windowsセキュリティセンターの管理データベース(WMI Repository)が、過去のインストール情報を誤って記憶し、ゴーストとして検出し続けている」状態であると、強く示唆されました。
カスペルスキー製品をアンインストール後に残存する場合があるファイルに関する説明
【治療プロトコル】3つのコマンドで解決する
治療方針は、この「誤った記憶」を持つ、Windowsの管理データベースを、一度リセットし、正常に再構築させることです。以下の手順を、正確に実行してください。
STEP 1: PowerShellを「管理者」として起動する
- Windowsのスタートボタンを右クリックします。
- メニューから「Windows PowerShell(管理者)」または「ターミナル(管理者)」を選択します。
- 「ユーザーアカウント制御」のウィンドウが表示されたら、「はい」をクリックします。
STEP 2: 3つのコマンドを、1行ずつ入力・実行する
開いた青い(または黒い)画面に、以下のコマンドを1行ずつ、コピー&ペーストして、Enterキーを押す
net stop winmgmt /y
cd c:\Windows\System32\wbem
ren repository rep.old
STEP 3: PCを再起動する
全てのコマンドを入力し終えたら、PCを再起動します。 再起動時に、Windowsはrep.old
を元に、新しく、クリーンなrepository
データベースを自動で再構築してくれます。
これで、治療は完了です。 再起動後、再度Windows 11へのアップグレードを試みてください。カスペルスキーの幻影は、もう現れないはずです。
注意点
コマンドは正確に:
コマンドの文字列は、一字一句間違えずに、正確に入力してください。コピー&ペーストが最も安全です。
「アクセスが拒否されました」と表示された場合:
net stop winmgmt /y
のコマンドが、他のプログラムとの競合で失敗することがあります。その場合は、一度PCを「セーフモード」で起動し、同じ手順を試してみてください。
参考ページ
ESETがインストールできないウイルスバスターの競合を解消する
まとめ:PCトラブルも、的確な診断と治療が鍵
一見、解決不可能に見えるPCの難治性エラーも、その症状を冷静に観察し、根本原因を正しく診断すれば、驚くほどシンプルな治療法で解決できることがあります。
それは、我々が日々の臨床で行っているプロセスそのものです。この思考法を、ご自身の「デジタルパートナー」の健康管理にも、ぜひ活かしてみてください。