在宅で、手軽に、副収入──。
コロナ禍以降、急増した「オンライン診療バイト」は、多忙な医師にとって、理想の働き方に見えるかもしれません。
しかし、その“手軽さ”という、甘い言葉の裏には、「時給6000円」という、厳しい現実と、見過ごせない、特有のリスクが潜んでいます。
この記事では、この新しい働き方を、一つの「治療法」として、その有効性、副作用、そして、長期的な予後を、医師の視点から、冷静に、そして、徹底的に、分析します。
オンライン診療バイトの、3つの評価軸
この働き方を、3つの、客観的な軸で、評価します。
① 経済的リターン(報酬)の、厳しい現実
「時給1万円」が、一つの大きな基準となる医師のアルバイト市場において、オンライン診療バイトは、時給6000円前後の案件が散見されます。また、勤務時間も、2~3時間程度の短時間募集が多く、一回あたりの収入額も、限定的です。 「在宅で、通勤時間がない」というメリットはありますが、それを考慮しても、寝当直など、他のバイトと比較して、時間対効果が高いとは、言いがたいのが実情です。
② キャリア的リターン(経験価値)の、欠如
現在のオンライン診療バイトの多くは、AGA(男性型脱毛症)や、ピル処方、生活習慣病の継続処方といった、比較的、定型的な業務が中心です。 これらは、我々が、専門医として、さらに深い知識や、新しい手技を身につける、といった「経験価値」には、繋がりにくい、という現実があります。キャリア形成という、長期的な視点で見ると、得られるものは、限定的かもしれません。
③ 新たなリスク(有害事象)の、出現
私自身が、この働き方に、最も、懸念を抱いているのが、この点です。
対面診療とは異なり、オンライン診療は、そのやり取りが、患者さん側で、容易に、記録・録画・そして、拡散されうる、という、新しい、そして、予測不能なリスクを、常に内包しています。 診察中の、自身の何気ない発言や、表情などが、意図しない形で、SNSなどで、断片的に、あるいは、悪意を持って、拡散されてしまう。この、個人のレピュテーション(評判)に関わるリスクに対し、現在の報酬は、あまりにも、アンバランスではないでしょうか。
この働き方の、未来
では、今後、この働き方の、待遇や価値は、向上していくのでしょうか。 残念ながら、その見通しは、あまり明るくありません。
現在の診療報酬制度が、抜本的に改定され、オンライン診療の点数が、対面診療を上回る、といった事態が起きない限り、この働き方の、経済的な価値が、今後、劇的に向上する可能性は、低いと考えられます。
【結論】私なら、こう判断する
以上の、リスク・ベネフィット分析に基づき、私自身は、現時点では、この働き方を選択しません。 なぜなら、より時間対効果が高く、かつ、キャリア形成にも繋がり、そして、未知のリスクが少ない、他の選択肢(専門性を活かした外来バイトや、寝当直など)が、数多く存在するからです。
しかし、これは、あくまで、私個人の価値観に基づく判断です。 育児や、介護といった、様々な事情で、「在宅で、短時間だけ」という、労働環境そのものに、絶対的な価値を置く先生にとっては、デメリットを許容した上で、限定的な適応については当てはまることが多いかもしれません。
まとめ:始める前に知るべき、全ての事実
オンライン診療バイトは、新しい時代の、魅力的な働き方に見えます。 しかし、その意思決定は、
- 時給6000円という、相場の現実
- 専門性が評価されにくい、という、キャリア上の機会損失
- 情報漏洩や、拡散という、新しいリスク
これら、全ての事実を、冷静に、天秤にかけた上で、行うべきです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. オンライン診療バイトを始めるには、何が必要ですか? A1. 厚生労働省が定める「オンライン診療研修」を、e-learningで受講し、修了証を取得することが、必須条件となります。 その他、安定した通信環境や、マイク付きのヘッドセットなどが必要です。
Q2. 時給が、他の医師バイトに比べて、なぜ安いのですか? A2. 「在宅で、通勤時間なく、手軽にできる」という、労働環境の良さが、価格に反映されていると考えられます。また、現在のオンライン診療の多くが、診療報酬上、対面診療よりも低く設定されていることも、一因です。
Q3. スクリーンショットのリスクとは、具体的に何ですか? A3. 診察中の、自身の発言や、表情などが、意図しない形で、録画・キャプチャされ、SNSなどで、断片的に、あるいは、悪意を持って、拡散されてしまうリスクです。これは、医師個人の、レピュテーション(評判)を、著しく傷つける可能性があります。