2023年も様々な書籍や漫画を購入しましたが、2023年印象に残った素晴らしい漫画を紹介します
なぜ今『東京ヒゴロ』を読むべきか?
2023年も数多くの漫画を読んできましたが、もっとも深く心に残ったのが、松本大洋『東京ヒゴロ』です。
大手出版社を退職した編集者が、漫画家たちと再び向き合い“理想の雑誌”を作ろうとする──この作品は、ただの漫画家漫画ではありません。仕事・人生・創作…中年期の“選択”と“苦悩”に向き合う、まさに大人のための漫画です。
東京ヒゴロ
松本大洋の作品で、宝島社のこのマンガがすごい!2022のオトコ編第5位になっている作品です
あらすじと登場人物の魅力
『東京ヒゴロ』は、定年を前に退職した編集者・塩澤が主人公。
彼は現場を離れてなお「良い作品を届けたい」という思いから、かつて関わった漫画家たちを再び訪ね歩きます。
- 筆を折った天才
- 生活のためだけに描き続ける作家
- 成功したはずなのに虚無を抱える者
それぞれの背景と“今”が描かれ、編集者と漫画家の関係以上の人間ドラマが浮かび上がります。
東京ヒゴロ(1)
大手出版社を早期退職した漫画編集者の塩澤。
理想の漫画誌を作るため、
自分が信じる漫画家たちを訪ね、執筆を依頼する。
仕事か、表現か、それとも友情か。
漫画を描く者、描かぬ者、描けぬ者、
東京の空の下、それぞれの人生が交差する。
松本大洋が初めて描く漫画家漫画、初めて語られる創作哲学。
これを読まずに松本大洋を知ることはできない、必読の一冊。
物語の展開と背景
登場人物たちの心理描写を補うものに背景、天候(雨)が描かれて街が松本大洋のタッチで描写されていきます。
舞台のほとんどは東京だと思われ、俯瞰で終わる絵が多く登場人物たちの生活している街が心情と重なり美しく描かれて素晴らしいです
松本大洋が描く「東京」と「雨」と「沈黙」
本作の最大の特徴の一つが、静けさの中に宿る感情の深さ。
降りしきる雨や、街の風景、沈黙の時間…松本大洋らしい繊細な筆致が、登場人物たちの心の揺れと重なり合います。
静かに、しかし強く読者の心を打つ構成が、これまでのどの作品よりも“成熟”を感じさせます。
読後に残る「問い」と「余韻」
この作品は、漫画家や編集者という職業を通じて、
- 好きを仕事にできなかった人
- 過去の夢を諦めた人
- “もう一度”挑戦したい人
そんな読者に問いかけてきます。
「それでも、まだ描きたいと思うのか?」
「あなたは、自分の“好き”にどこまで向き合ってきたか?」
特におすすめしたい読者層
この作品は、若い世代よりも、むしろ30代・40代以上の読者に刺さるはずです。
過去と向き合い、今を生き直す。その葛藤に、深く共感する場面がきっとあるはずです。
松本大洋作品
松本大洋が描く卓球というスポーツ青春群像
『ピンポン』『鉄コン筋クリート』などで知られる松本大洋作品の中でも、“大人になった松本大洋”が描く人生の物語という点で、異彩を放っています。
特に『ピンポン』が“青春”だとすれば、『東京ヒゴロ』は“熟成”の一冊です。